インターネット版●

富田和明的個人通信

月刊・打組

2005年 5月号 No.101(5月2日 発行)


しあわせのたいこ

GW-東伊豆高地 春を訪ねる旅

4月30日+5月1日

「あのさ、僕の知り合いでダンショクの会を始めた人がいるんだけど‥‥」

「えっ? ダ‥‥ダンショクですか?」

「そうなのよ、‥‥でもそんなにビックリしなくてもいいでしょう‥‥? そりゃ普通はやらないよね、そんなこと。  でもさ、最近オレもちょっと興味持ち出してね‥‥」

「そうなんですか‥‥」

「オレの生活ってやっぱ乱れてると思うんだよ自分でも。だからこそ刺激が必要かな〜って」

 

「いや〜トミダさんはそうかもしれませんが、僕にはちょっとついてけないです」

「大丈夫だって、誰でも最初はちょっと心配かもしれないけど、やってみると意外に楽しいかもしれないよ〜」

 

「楽しいですかね〜  いえいえ、イヤイヤ、僕はその気まったくありませんから! 誘わないで下さい!」

「そんなにムキにならなくてもいいでしょう?! ダンショクの後の、一握りの飯、一杯のビール、ね、絶対にコレ美味いだろうね‥‥」

 

「‥‥‥‥    」

 

「オレの場合はさ、もっと美味い飯を喰いたいから、うまい美味い酒を飲みたいからっていうのが動機なんだけど、‥‥それってやっぱり不純かな〜」

「‥‥トミダさん?」

「‥‥うん?」

 

「‥‥ひょっとしてトミダさんが言ってるのは‥‥『ダンジキ』のことですか?‥‥」

 

「ダ ン ジ キ って??  食を、断つんだよ! ダンショクでしょ?」

 

「それは、断食(だんじき)ですよ!!!」

 

 

 

 

 どうも話が噛み合わないと思ったら、自分が間違っていたようです。みなさんも気を付けて下さい。

 ダンショクとダンジキはまったく違います!(僕だけか?気を付けなくてはいけないのは‥‥)

 

 その断食の会ですが、里山リトリート『しあわせのたね』といいます。Nさんという方が、奥さんと一緒にやっています。

 今年の四月にまだオープンしたばかりで、これから毎月二回ほど開催される予定なのですが、今後の日程を聞くと全部僕のスケジュールと合わない。残念!

 でもどうにも気になっていて、ちょうどこのGWに僕の空き日程があって、Nさんにも空きがあったので、無理矢理押し掛けて行ってきました。

 

 

 ただ、いくらなんでも初対面の方にはこんなことはできませんよ。
 Nさんは、かつて淡路島に住んでいて、太鼓アイランド淡路のメンバーでしたから‥‥。今は太鼓の練習はお休み中ですが。

 5年前の春の芽生え・2000年3月、淡路で開かれた『二千年を打つ会』にもご夫婦で参加されていました!

 当時、Nさんは淡路で鍼灸の勉強をしていらっしゃいまして、卒業後伊豆の施設に就職。そしていよいよ独立した!と、こういう訳です。

 懐かしいお二人の顔を拝見したいと思ったからで、自分の腰痛をあわよくばタダで見てもらおうとか、自家製天然野菜だとかいう味を確かめたかったとか、展望のきく御自宅のデッキから蒼い海と満天の夜空を眺めたかったとかいう動機で訪ねた訳では、決してありません。

 

 落ち着いて考えて下さい。

 里山リトリート『しあわせのたね』

 

 まず「リトリート」という言葉が判りません。リクルートなら何とか判りますが、リトリートは判りません。

 それに『しあわせのたね』。これは絶対にダメです。僕はついていけません。

 普通だったら、この手の言葉に拒否感しか覚えない僕です。

 例えば、『しあわせのたいこ』というを僕が始めたらどうでしょう‥‥。

 HPをひらくとまず真っ先にこのタイトル。

 僕自身が、退きます。

 なのにどうしてこの『しあわせのたね』だけは、心を許してしまったのか?

 

 それは、Nさんの笑顔です。

 あの人が何か始めたのなら、ちょっと覗いてみよう。そう思わせる人なのです。

 

 何が一番キライかと言って、「イバってる人」を見ることほど、僕はイヤなことはありません。

 

 僕も気を付けないといけませんが‥‥鼓童時代の後輩に久しぶりに会って昔の僕の印象を聞くと、たいてい「恐かった」と言われます。

 これもいけません。

 今は、できるだけ怒らない、上から下に言うような言葉遣いをしない、いばらないように、いつも笑顔で‥‥とは心掛けています。

 でもこれが自然に自分の体から滲み出て来るものでないと、これまたいけません。逆にストレスになるようではニセモノです。

 

 だから僕の大好きな人は、みんないばったりしない、自然な笑顔の人です。

 

 Nさんは、三月生まれの魚座で血液型Aと聞いて、超ロマンチストで愉快な人であっても、落ち込みやすく気むずかしい一面もあるだろうと、僕は勝手に想像をしたりもします。

 ただ彼は、笑顔の下に、心と体の健康に関して頑固です。そこが僕と違います。そこに僕の憧れもあります。

 

 そして、何か予感がある人です。

 ゴールデンウィークになってようやくズボン下のタイツを外せる、下半身冷え性を訴える僕です。
 夏でも長袖シャツを着て寝て、汗をかいては風邪を引いています。
 また、時としての多飲大食もなかなか止められず、コレステロールを下げる薬と、花粉症の薬をいまでも飲み続けている、病院へ行って点滴されたり注射されるのが大好きな僕です。

 そんな僕の前に立つNさんは、春夏秋冬、Tシャツ一枚に下は短パン1枚だといいます。それにシャツには穴も開いていました。

 薬を飲むこともほとんどないそうです。かと言って自慢もしません。さりげなかったです。

 ご自宅は東伊豆にあり、着いた日は快晴でした。

 近くにある畑では、自然農法で野菜を育てています。
 少しだけ手伝いました。邪魔にならないように‥‥。
 最初は畑ばかり見ていた僕ですが、顔を上げると、その場所は見事な杉林に囲まれていました。

 

「ここは、す、すごい杉ですね〜」

「でしょう? 今は見えませんが、ちょっと前までは花粉の束が嵐のように吹いてました」

「‥‥それで花粉症にはならなかったんですか?」

「いえいえ、さすがに僕もここに来て初めて花粉症になっちゃいました」

「ですよね。 当たり前ですよ。これで花粉症にならないほうがおかしいですよ」

「それでね、なんとかいろいろ考えて治しました」

「え? ‥‥何かいい薬がありましたか?」

「いえ薬は飲んでないです」

「‥‥薬とか注射とかしないで、治るんですか?」

「それがねぇ、治るんですよ〜」

 

 Nさんは、とっても嬉しそうでした。

 でも僕はどうやって治したのか、詳しくは聞いていません。聞くのが恐い気もしました。

 里山リトリート『しあわせのたね』の断食はまだ軽いコースしかありませんが、入門者にはちょうどいいのでしょう。
 右脳と左脳をほぐして、自分の体を自分で治す整体もやるそうです。僕も秋には必ず参加しますと約束しました。

 

 彼が本物かどうかの判断は、すぐに出来ることではありませんが、今の僕は、春の伊豆に咲く花々とともに、美しく輝く野見山を思い浮かべ、少しだけ幸せな気分に浸っています。

 

 こんな僕が、またこれからどんな人々と出会い、どんな太鼓を叩けるでしょうか‥‥。

写真は、すべて伊豆大室山で

しあわせのたね http://plaza.rakuten.co.jp/yululi/


インターネット版 『月刊・打組』 2005年5月号 No.101

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