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富田和明的個人通信

月刊・打組

2006年 9月号 No.110(9月16日 発行)


明日への一打

第五回 東京国際和太鼓コンテスト・大太鼓部門に出場の後で

8月28日

※「富田和明 鶏音鼓2006発響」東京公演より 門仲天井ホールにて photo/KOSAKA JUN

 コンテストは残念ながら入賞せず。。。

     

 昨日、第五回東京国際和太鼓コンテストが青山劇場にて開かれました。  

 

 

 僕は大太鼓部門のトップバッターとして舞台に登場しまして、久々の緊張感を味わいましたが、課題曲にしても自由曲にしても現在の力は充分に出し切ることが出来ました。

 自分と太鼓との心地よい時間が流れ、出番が終わった時、爽快感、達成感がありました。  

 

 これで、胸を張れると‥‥。    

 

 

 今年の夏、鶏音鼓2006東京公演が終わった後の8月1日から課題曲の練習を始め、お盆休み中の8月9日から16日にかけ、淡路市生穂第二小学校の体育館をお借りして集中稽古を行いました。  

 自分の三尺三寸平胴太鼓を体育館の片隅にセットさせて頂き、朝の9時から好きなだけ時を忘れて叩き、ヘトヘトになっては炎天下の山道をフラフラと歩いて家に帰りました。  

 短い期間ではありましたがこういう毎日を過ごしたのは、何だか初心に返った、蘇る青春の一コマであったように思います。場所を提供して下さった、生穂第二小学校関係者の皆様に改めて感謝いたします。    

 

 また大会四日前の8月23日には、新潟県長岡市の越路巴太鼓の稽古場と大太鼓をお借りし、稽古をさせて頂きました。  

 今回コンテストで使用する太鼓は、四尺の大太鼓なのですが、そんな大きな太鼓を叩いて練習する事は普段はできません。

 僕の三尺三寸も平胴ですから、どうしても稽古の最後に大太鼓を叩いて練習したかったのです。響きがまったく違いますから‥‥。

 そんな時、こしじ巴太鼓の大太鼓を思い出しました。僕が結成当時から三年間毎月指導させていただいたグループです。  

 日帰りの日程でしか組めませんでしたが、ここでもたっぷりと大太鼓と過ごすことが出来ました。巴太鼓の皆様のご厚意に感謝いたします。    

 

 

 他にもこのコンテストの為に衣裳の特別バージョンを作って頂きました。  

「今までに誰も見たこともない、バチの取り出し方」

 アイデアは僕ですが、それを鴇田章さんと伊藤晴美さんが案を練り、実際は伊藤さんが制作して下さいました。当日の本番まで誰にも見せずに、本番の舞台で初めて腰に付けました。

 今回の審査委員の皆様の中には、良しと思わないであろう方々がいるかもしれない事は予測しましたが、僕はどうしても使いたかったのです。    

 

 

 7月末の冷夏が過ぎた後の茹だる8月の暑さの中、楽しく、また真剣に太鼓と向かう時間を持てたことは、このコンテスト出場の機会が与えられていなければ、なかったことでしょう。  

 

 直前に淡路島でイベント出演をしてとんぼ返りという、慌ただしいスケジュールではありましたが、予定通り会場に入る事ができました。  

 

 

 そこでは、たくさんの応援の皆様が迎えて下さいました。

 近隣から遠方からお越しの、たくさんの皆様の大きな声援、本当にありがとうございました!    

 

 

 大太鼓を叩く楽しみ、深さは、計り知れません。

 まだまだ、これでいいということでは、まったくありません。不足点も見えました。参加出場の機会を与えて下さいました、コンテスト関係各位の皆様にも感謝いたします。   

 

 

 

 これからも自分の満足のいく大太鼓の世界を求めていきたいと思います。   

 

 皆様から頂きました拍手、ご声援は、僕に贈られた花束だと思って心一杯に飾られました。


あきらめない、なげない、にげない

〜石井眞木さんからの挑戦状

9月3日

 大太鼓コンテストの課題曲は、第一回大会から変わらず、今回の第五回大会でも『ビーテッセンス?』が取り上げられた。

 今回は会場も変わったし(前回・代々木国立青少年センターから渋谷の青山劇場に)、そろそろ課題曲も変わるだろうかと期待もありましたが、変わらなかった。  

 

 

 以前客席でこの曲を聴いた時、「なんて曲なんだ‥‥」とちょっとしかめっ面をして呟いていた。

 これまでのほとんどの演奏者の叩き方が、曲として成り立っていないような印象だったからだ。まず聞いていて面白くない。

 また、これを叩くのか‥‥。

 最初の感想がそうだった。    

 

 

 でもこの曲を叩かなくてはいけない。

 心を決めて楽譜を読むことにした。  

 

 

 作曲者は石井眞木さんだ。

 知らない方ではない。  

 

 

 眞木さんは、何を表現したかったのか‥‥僕は出来るだけ楽譜に忠実に正確に叩こう、叩きたいと思っていた。

 何度も読むこと、何度も叩くこと。それしかない。    

 

 

 練習を続けていて感じたのは、

 これは「眞木さんから奏者に突きつけられた挑戦状だ」

 ということ。    

 

 

 一尺五寸程度の大きさの太鼓で細いバチでなら叩けるけども、四尺の大太鼓を太いバチで叩くような楽譜ではないのだ。それを敢えて書いてある。

 眞木さんの薄笑いの顔が目に浮かぶようだった。 「フッフッフ、これをどう叩いてくれるかな?」  

 

 

 眞木さんは、どう叩いて欲しかったのだろう。眞木さんは、僕が叩くのを見て何と言ってくれるだろうか?  

 

 そう、ずっと考えていた。    

 

 

 確かに難解な曲ではあるけれど、噛めば噛むほど味が出てくる噛みごたえのある曲だった。  

「よくこんな曲を書きましたよね。作られましたよね〜」

 眞木さんが生きていたら、直接言いたかった。

 でもたぶん、魂は会場に降りてきている筈だから、その眞木さんに聞いてもらおう。

 そう思って練習をした。  

 

 

 打つほどに大好きになっていたこの曲だけれども、打つほどにより難しさも感じていた。覚えきることさえ難しいのだ。

 集中すること。

 この歳になって久しぶりに味わう大きな集中の時間だ。  

 

 

 もう大丈夫。これで出来た!

 と思って太鼓に向かい叩いても、突然にフッとゼロコンマゼロゼロ何秒かの空白が飛び込んで来ると、止まったり、リズムが微妙に狂うことがあった。もっともっと何度でも練習をするしかない。  

 

 

 曲は好きになっていたし、表現の方向も見えてきていたが、どうしても恐ろしいのはこの空白の訪れだ。

 自分を信じるしかない。    

 

 

 もし万一、それが訪れたとしても、途中で何があったとしても、

「あきらめない、なげない、にげない」そう心に誓っていた。  

 

 

 舞台に名前を呼ばれて登場する前にも、下手袖奥の暗がりで声を出して、最後にもう一度自分に言い聞かせた。そしていろいろな方に感謝をした。    

 

 

 本番の演奏を見て、聞いてもらって、眞木さんは何と言ってくれただろうか‥‥。何を思ってくれただろうか‥‥。  

 

 ありがとうございました、眞木さん。

 

 

 

 

※「ビーテッセンス」とは、Beet/打つ、連打する。と Essece/本質、真髄、との合成語で、根本的要素を現している。(楽譜説明より)

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※「富田和明 鶏音鼓2006発響」東京公演より 門仲天井ホールにて photo/KOSAKA JUN

今度はあなたが叩く番

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