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富田和明的個人通信

月刊・打組

2003年 3月号 No.83(3月1日 発行)

このページはほぼ毎月更新されます。年10回の発行

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声に出して叩きたい太鼓

2月22日

 

 バレンタインディーの頃までは「チョコレートの太鼓」をよく叩いていたが、最近のマイブームは「ミカンの太鼓」だ。
 チョコの方は、去年イギリスに行った時、子供たちの手遊び歌を教えてもらい、これが一旦始めると止められない楽しい遊びで、もったいないのでこの言葉に日本の太鼓のリズムをくっつけた。
 ミカンの方は、都内のK中学校で聴覚障害を持った子供たちに太鼓を教えていて、もう付き合いは四、五年になるが、ここの先生から何か簡単で楽しい太鼓をと頼まれて作ったものだ。
 冬の果物と言えばみかん!
「みかん、みかん、おいしー みかん」 から始まり、「おかーさん、ズボンがやぶれたよ」「またか!」で終わる。この言葉を音楽室の黒板に書いてもらって、その言葉のリズムに手と体を合わせて叩く。
 まったく即席で作った曲だったが、簡単な曲なのにこれが叩くほどに味わい深い。
 その後、養護学校でも叩き、太鼓アイランド川崎では、踊るみかんの太鼓と編曲され、横浜・泉教室でも踊り、江東では輪唱四個のみかんの為の太鼓となり、目黒では、見つめ合うみかんになっている。ここんとこ、みかんづくしだ。

 僕の太鼓アイランド・ワークショップは、教室毎に、内容は一応決まっているが、その通りにほとんどなっていない。目黒では横打ち、江東は正面打ち、そのスタイルは変えていないが。
 始まって三、四年ほどは、叩けることを目標に一曲を仕上げるようなスタイルで、半年毎に曲を変えていたが、五年にもなるとやることがだいたい一巡してしまう。集まる方たちは、ほとんど入れ替わっているので、それでもいいかなと思いながら、でも僕も新しい事をやっていないと飽きてしまう。
 それではどうしようか、と考えてしまうのだが、集まってきてくれた人たちの顔を見ると、何だか自然に始まってしまう。
 チョコにミカン、この言葉を作ってそれを叩くのが楽しい。
 曲を作ろうなどと考えると難しいが、好きな言葉を並べてみて、それを声に出しながら太鼓のバチを握ってみると、自然にリズムが湧いてくる。覚えるのも速い。
 僕は声に出して叩くのが好きだ。
 お腹の中の空気を動かすことで元気が出る。楽しい話題の乏しい毎日だが、太鼓を叩いているとやっぱり楽しい。

 

■その日の気分打 2月25日付けで一度発表されたものですが、こちらに移動しました。この部分は22日に書いたものでした

 

 

 

腰のフラメンコ

2月20日

 

 この寒い冬の時期、コンサートが少ないからといって休んではいられない。
 プロ野球選手の自主トレ・キャンプなども連日報道される中、零細個人太鼓打ちである僕も何とかしなくてはいけない。今のうちに春に備え、夏に実るよう体を鍛えなくてはいけないのだ。
 太鼓を叩くこと以外にこれまで僕がやっていたことと言えば、朝の一時間ウォーキングだけだった。これでは上半身の筋肉は鍛えられないし、ダンスもやりたかった。とにかく体を動かしておかなくては、いざという時に役に立たない。
 今は時間はあるのだから、この機会にフィットネスクラブに入ることにした。自転車で5分ほどの距離にちょうどいいのがある。
 数年前にも会員になったが、その時は忙しくて行く時間がとれず、結局二、三ヶ月で解約した。今回はどうなるだろうと思いながら、いきなり申し込みに行ったその場で会員カード用の顔写真も撮られた。こういう時だ、僕が関東を嫌になるのは。
 せっかく僕が思いっきりのわざとらしい笑顔を作っているのに、シャッターを押すフロントの女性はクスリとも笑わない。何事もなかったように、「ハイ、けっこうです」というだけだった。
 ここは少しでも笑うなり、「ちょっと笑いすぎですよ」とか注意するなりしてほしいところを、無視。人としてこれでよいのだろうか? 求める僕がいけないのか‥‥。
 気を取り直して、「週に二回でも行ければいいのだけれど」。そう思いながら、僕のジム通いがスタートした。

 僕が入ったのはモーニングコースなので、ほとんどが主婦の方、美しい方からそうでない方まで非常に幅が広い。それと職業不明?の男性の姿もチラホラ見える。一人はレスラーのような雰囲気でいつもバーベルで筋力トレーニングをしている。いつか話をしてみたいと思いながら、そうもいかない。
 まず、ジムが全体的にみなモクモクと、ワッセワッセと運動をしているからだ。川沿いをウォーキングしていた時のような田圃を眺めながらの牧歌的な開放感はなく、ここでは、ちょっとのっぴきならないせっぱ詰まった感じさえもある。
 僕もその中に混じってモクモクとトレーニングを始めるわけだが、当然、素晴らしいスタイルとか顔つきの方が入っていらっしゃると、見てしまう。
 モクモクと取り組みながら、合間にモクモクと鑑賞する。そこにまた女性でもすごい体付きの方がいらっしゃる。モリモリの。
 そう言えば、去年イギリスでワークショップをやっていた時に、あちらでは挨拶で抱き合いますから、ワークショップが終わった後などで挨拶をする際に、ここでもすごい筋肉モリモリの女性がいたりして、つい僕がその体をパンパンっと音を立てて触りながら「ナイスボディ!グッ」って、自分では褒めていたつもりが、後で世話人のLさんから「トミダ、あれはだめよ。ナイスボディ!っていうのは、すごくイヤラシイ」と注意された。
 イギリスでは人の体を褒めることも難しいなと、その時思った。セクハラにならないようにしないと、とその後、気を付けることにした。
 それでまた数日後、そのLさんがおへそにピアスをしていたので、僕がただビックリして見ていると、Lさんが「私の彼なんかオチンチンにピアスしてるわよ」と平然と言う。
 日本ではあんまりそう言う話は、他の人に言わないと思うがイギリスでは普通の会話らしい。僕が「そんな話をしてもいいの?」と聞くと、「自分が彼の話をするのはいいのよ。どうしてダメなの?」と逆に聞かれた。
 そうかつまり「あなたの彼の○○にピアスが付いてるんだって?」と聞いたりするとこれはもう確実にビンタを食らうことになるらしいが、自分で言うのはいいらしい。そんなことを思い出しながらモクモクとトレーニングを続けていた。

 そこにはスタジオも当然あって、エアロビクスが盛況なのである。  初心者コースというのに一度参加してみたが、これがなかなか難しい、のに、主婦の皆さまはこれまた平然と音楽にのって体を動かしているのである。
 ここは僕だって歌って踊れる太鼓打ち宣言をしているのであるからして、負けてはいけないとフンドシを締め直した。
 これくらいの入門ステップ一つ踏めないのであれば、五月の新紀撃02のダンスシーンも危なくなる。あの熊谷にまた水を開けられてしまう。よし今のうちに鍛えようと考えるのも、誠に自然の成り行きと言えるだろう。
 第一週、二週と通えたのはやはり二回ほどだったが、三週目は頑張って月火水と三朝連続で通った。最初はついて行けなかったステップ部分が少しづつでも慣れていくことは嬉しい。
 一つコツも掴んだ。
 先生のそばで動いたほうが声がよく聞こえるし体の動きもよく判り、なぜか自分の体も動く気がするのだ。その後、努めて前列に並ぶことにする。恥ずかしがり屋の僕にしては一大決心である。
 スタジオに集まる30人ほどの花園の中になぜかいつも男性は二人なのも、対抗意識を持ってしまう。
 そうやって迎えた水曜日の朝のレッスンは「初級ステップ」。
 僕は先生の右真後ろの場所を確保した。そうすると、なぜか左横に見覚えのある男性が並んだ。
 この広いスタジオで二人しかいない男が並ぶ最前列。
 こんなことは初めて。ちょっと妙。レッスンの先生は美しすぎる方ではない。決してない。だからそういう理由では絶対なく、ただただ純粋にステップを踏みたい一心の僕である。
 45分間。頭の中が真っ白になるくらいの心地よい緊張と疲れで汗をかき終了。この日も夜には僕のワークショップをやっていて、こういう日は朝から晩まで踊りっぱなしである。

 翌朝布団の中で目覚めたのは七時十分前、疲れを感じてはいた。
 ジムに行こうかどうか考える瞬間だ。気分を変えて、旧来の早渕川ウォーキングコースにした。
 寒い朝だったが、この日も快調に歩き、家に戻ってからシャワーを気持ちよく浴びた。その日は久しぶりのオフだったので映画でも観たいと思っていた。
「戦場のピアニスト」を見たかった。
 お出かけ用の着替えをしようと、黒の皮スボンに右足を入れようとした時だ。
 ?  
 腰に違和感を覚えた。
 背中に嫌な汗が一筋。立とうと思ったがすぐには立てなかった。ゆっくりと立ち上がった。そして歩いてみた。歩ける。大丈夫。よしよしと自分を納得させながら、歯を磨こうとしたら、腰が曲げられなかった。う〜ん。
 こうなってもまだ僕は映画を諦めきれずに外出した。
 ところが地下鉄に乗って椅子に座ったり立ったりがスローモーションでしかできなかった。慌てて以前行きつけだった整体院に予約を入れ、引き返す。映画どころではない。
 こうして整体院に辿り着いて、治療を受けることになったが、新顔の先生が僕に付いた。いつもの先生は人気が出過ぎて予約が取れない状態だったので仕方なく。
 うつ伏せになってゆっくりと治療を受けるがどうもしっくりこない。
 僕は嫌な予感を振り払うように、ずいぶんと会話も自分の方からしてしまう。いつもの僕なら、治療中は、かなり寡黙であるのに。
 そして先生から「ハイ、じゃ体を横にして」と言われて動こうとしたら、腰に激痛が走り、まったく動けない体となってしまっていた。
 どうなったんだ?自分の体は、他人の体のようになっている。
 息をハアハア喘ぎながら、先生二人がかりで体を起こしてもらった。良くなると思ってここに来たのに、その逆になった。こういうこともあるのか。その後に言われたその先生の一言が酷かった。
「すみません。整形外科の病院に一緒にいきましょうか?」
 僕も思わず切れそうになったが、怒ると腰に響きそうでおとなしくしていた。ホント立って息をするだけで腰に響くのだ。

 翌日、整形外科病院へ行きレントゲンを撮り、痛み止めの注射をして薬を飲む。
 ヘルニアとか座骨神経痛ではなく急激な疲労で筋肉が萎縮してしまっていたらしく、四、五日で治るだろうとは言われた。あの整体院での治療は何が起こったのかと驚いたが、まあひとまずは気持ちを落ち着けた。
 それにしても。
 お金を払ってジムに通い、体を悪くして整体院に行けば、それ以上にひどくなり、また病院に行った。そして今は無理をせずに休んでいる。
 バリバリと鍛えて踊りたかったのだけれど、強化月間のはずが、また逆戻りだ。

 好きなんだけど 離れてるのさ
 好きなんだけど‥‥

■現在(3月1日)は、痛みはそれほどありませんが、まだちょっとおそるおそる動いています

 

 

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インターネット版 『月刊・打組』2003年 3月号 No.83

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