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富田和明的個人通信

月刊・打組

2003年 10月号 No.89(10月30日 発行)

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真打(まだ)はじまらない無打話

和太鼓トーク齊富 開演前

10月17日

 処は東京下町・門前仲町。とあるビルの八階・門仲天井ホール。  開場後15分くらいたったところで、お客様に溶けこむような雰囲気で客席に現れ、お客様と雑談したり、席への誘導などをしている二人。そろそろ客席が落ち着いてきたところで、気が付けば、舞台上で会話が始まっている
Photo/青柳健二

 

富田(以降は 初めて会ったのは、高校3年の時だったっけ?
齊藤
(以降は まだ2年ですよ、2年生の夏休み。アッ違う、3年生になってから。それで佐渡に遊びに行ったんですよ。僕、遊びにね
 あっそう、その時はまだ髪の毛がたっぷりあったんですよね。(笑い)横幅ももっとあったよね
 横幅は今の富田さんよりもありますもんね、あの頃。イヤハハハハ、僕すっごい太っていたんですよ(お客さんに向かって)まじめにね!かなりでしたね。で!あの体格で、あの頃の体格で鼓童に入りたいんですって言ったもンだからもうみんなに笑われてね
 いやあの時、笑わなかったよね、みんな。シーンとなった
 そうですよね。もう鼻で笑われたっていうかね、ウッソーみたいな感じでね
 あれがだから23年前ですか‥‥
 23年前? ウーン
 イヤー、あの〜齊藤栄一さんはだから、あの〜 (笑い)っていうか栄一は‥‥
 今ちょっとこの辺がかゆかった(首周りをかいている)
 一応今日は、呼び捨てではまずいかな〜 と思って
 ふつう栄一じゃないですか、栄一でいいですよ
(入場してきたお客さんを見つけて)あっ前の方にどうぞ、もう後ろの方席ないですよ
 (そのお客さんに向かって)はいサイトウさん、そっちは席ないですよ。こっち、こっち
 あっ、サイトウさんなんですか?
 あの方もサイトウさんなんです
 あっそうなんですか。もう後ろの席は残念ながらありませんよ
(後ろはイス席。この時、空いていたのは前のかぶり付きの座布団席だけ)残念なのかラッキーなのかわからないんですけどね(笑い)まあどうぞ
 だから鼓童には一緒に何年いたっけ? 23年前に会って、13年か14年振りに今回会ったんでしょ
 ごめんなさい、計算が苦手で
 だから8年ぐらい一緒にいたかな
 それくらいいたんですね
 8年いたね。ウーン、8年。だから彼はまだまっさらな太鼓も何も出来ない、何も知らない
 清い、きよ〜い青年だったですね
 えっ?‥‥ま、目が変わってないよな
 イヤだから僕、太鼓なんか全然やったことなくて佐渡に行きましたからね
 全然真っ白な状態で入って、それからどんどん成長してゆく8年を、僕は見てきた訳ですけれども、その後14年間どれだけメキメキ本当に腕を上げていったのか、全然知らない
 あっそうですよね
 それでね
 富田さんあれですよ、僕もあの〜その8年間? まあほとんどいじめられていましたからね。その頃ね
 誰に? 僕はぜんぜんいじめていないですけど
 (沈黙)(笑い)
 そりゃね注意はしないとね、悪いことしたら「コラッー!」って。「なにしてんだ お前は!」って
 ごめんなさいですよね。まあねその頃の思い出っていうか怒られて恐い先輩でしたから。それで8年間過ごして、でっ、こんど13年間全然コンタクト無かったですもんね
(入場してきたお客さんを見つけて)あっ!いらっしゃいませ。まだ始まってませんのです。すみませ〜ん
ですから僕、どちらかというと恐い痩せた富田和明しか知らないですよ。ホントにね
 だから今は5キロぐらいですよ当時より太っているのが‥‥(Sの疑惑の目を感じて)10キロは変わんないですよ、5キロですよ
 パッと見て8キロはいって‥‥ あっそう。僕も13年間富田さんが一度中国行かれたでしょう、それでその後太鼓の活動をもう一回始められたって言う噂は聞いてたんですけど、全然知らないですから。富田さんがどういう世界で攻めてくるっていうのはね。お互いリハーサルはちょっとやったんですけど手の内は絶対に見せないですからね

 そうそう。それで今年の5月に(鼓童の)藤本吉利さんに会いにっていうか、7月に25周年にコンサートをやりましたから吉利さんとの稽古に佐渡に行ったんです14年ぶりに
それで行った時に齊藤栄一が会いに来てくれて、吉利さんの家に行った時に僕が『和太鼓★新紀撃02』のビデオを持っていたんですよ。それで見てもらったら‥‥黙っちゃった。ねっ(笑い)黙っちゃった
 ウン、まあいろんな意味でね (大笑い) あの日は僕の誕生日だったんですよね。もうほんと
 あっ!おめでとうございます。(客席に向かって)いくつだと思います? 齊藤さんいくつにみえます、齊藤栄一? パット見わかんないでしょ、老けているのか若いのか
 まあ髪の毛無いですからね。僕でもね、髪の毛こうなってからなんか若返ったってよく言われるんですけどね
 なるほどね、明るくなった(笑い)
 う〜んまあ、っていうかね、あのまんま中途半端にくっついているとね、なんかね貧乏くさく見えるんですよね。なんかね
 もう気持ちが吹っ切れたんだ
 ウーンそうですね

 でもねすごい久しぶりに会ったんですよ。まあ今回の稽古期間ってあまり長くないんですが、ちょっとこの前も彼と(Sのスケジュールが)空いている日に合宿して稽古しようということで、久しぶりに会う時、駅まで車で迎えに行ったんですよ
(僕の車は)ハイエースなんですけど、ハイエースに全部道具を積んで‥‥でっ駅に着いて、あっ栄一だと思って車止めて「あっどうも」って乗ったんですよね。まあこれは普通なんですけどね
 乗っちゃいけなかったんですか?
 イヤイヤイヤ
 全然わかんないですよ僕、遠慮せずに乗ったって事ですか?
 イヤイヤイヤあのね14年間の距離って言うか時間がね一瞬にして縮まるっていうか‥‥太鼓を叩いて理解するっていうんじゃなくて、叩かなくて解ったっていう話をね、僕は今からしようと思って
 そうなんですか?  
 それでね車に乗りました
僕ね今、稽古で川崎市青少年の家によく行っているんですけど、そこに着いて車を降りる時にですね、彼はまず助手席のウインドーを閉めて、ドアのロックをして、自分で外側の取っ手を上げたまま、どうも〜って言って鍵を掛けてくれたんです
普通はやんないんですよ、オートロックだと思っているから。普通は、助手席の人が降りてから僕がこうやって(体を斜めに倒して)自分で閉めなきゃいけないんですよ。でも彼はそうやってちゃんと、僕が何も言わないでもやるんですよ。それでそのままパッと気がついて、どこに行ったかな〜と思うと、もうすでに車の後ろに回っているんですよ。言う前に‥‥普通は言わないと行かないんですよね
特に最近の若い人は‥‥黙っててね、前につっ立っているから、ちょっと見てくれってこちらから言うんですよ。彼、栄一は何も言わないのに後ろ行って「オーライ オーライ」とすぐ声をかけててそれで「ハイあと一メートル、もう間もなく、ハイOKです」って言ってくれるんですよ。まあ必要のない時にも言ってくれてましたけどね(笑い)
 何!そんなところで感動していたんですか?
 ウン。最近、誰かとは言わないけれど、僕が悪いけど後ろ見てくれる?ってわざわざ頼んで「ハイ」って返事してね 「ハイ、ハイ、ハイ‥‥」 ドーン 「ぶつかりました〜」って、ぶつかる前に言ってくれよ!(大笑い)
 そうでしょうね
 多いですよ、こういう人が
 あっ それでへこんでいたんだあの後ろ
 イヤイヤイヤ ちゃんと直しました。  まあ彼は、気遣いが素晴らしい。悪く言うと、落ち着きがないと思う事があります
 そうですか?
 だってレストラン入るでしょ、入ったらすぐ箸が‥‥
 ハイハイハイどうぞー (レストランに入った感じでドアを開けてくれる)
 だいたいこんな感じなんですよ
 はいメニュー メニュー
 メニューは持ってこないけど まずね、箸をパッと渡されて。僕もね誰かと来たら渡しますけどね、やろうかな?と思ったら先にやるんですよ。先もらっちゃうんですよ。例えば餃子とか注文するでしょ、あっ小皿とか出そうかなと思ってたらもう彼が先に皿を出してて、醤油入れてて「あっ富田さん、ラー油どうしましょうか?」って聞かれちゃうんですよ。なんかああいう時ね ちょっとひっかかりますよね
 そうですか?
 そうそう。お水がセルフサービスの所ってあるんじゃないですか、最近多いから。あっ水が来てないな持ってこようかな‥‥と思ったらもう栄一が先に席を立って、小走りで取りに行ってる。それで「ハイ富田さんおまちどおさま〜」って。「ああ悪いね栄一」って言いながら「ちょっとおい、休ませてくれ〜」っていうことありますよね
 そんな細かいですかね
 それで食べててちょっとトイレに行きたいなっと思って「栄一、オレちょっとお手洗いに行って来るわ」って言ったら、栄一が先に立って「イヤー富田さん、いいですから座ってて下さい、僕が替わりに行って来ますから!」って(大笑い)
 なんか随分ベタな話になってきましたね
 イヤーほんとですよ
 まあね〜
 まだ稽古やる前ですよ
 イヤーだって先輩ですよ、大先輩ですからね。そりゃね気ー使いますよ。僕、気ー使っているんですよ
 でもいつもでしょ
 いやそんなことないですよ
 先輩だからじゃないでしょ
 いやいや、先輩だからですよ。僕はねさっきも言ったけど13年前の怖い先輩としか頭にないですからね。ちょっとでもしくじって怒られたら困るな〜と思って‥‥
 そんなに怖かった?オレ
 そうです。すっごい恐かったです
 ウッソー(客席に向かって)見えないですよね、こんなに穏やかなのにね

 まあでも今日は久しぶりにどうなるかわかんないですけどもね、ハイ。そろそろ始めないとね (前の方の空席を見つけて)でもなんかこの辺ねえ、まだ入れますけどね
 ここだと途中で来た方は入れませんね。あっそれでは受付の方、後からいらっしゃった方は花道を通ってここに来るように言って下さい
 照明さんにもちゃんと灯りをつけてもらいますからね。曲の途中でもね まあじゃあそろそろそういうことで、今回久しぶりに会った二人が、何が出来るかわかんないですけど
 今、何にもわかんないよオレ。これから何すんのかな〜ってア・ハ・ハ・ハ・ハ
 今 本当しゃべりすぎて頭真っ白でしょ
 イヤイヤ大丈夫
 たぶんね、3曲目の次がなんだかもう覚えてないと思いますよ。たぶん‥‥。やってて絶対僕がこうやって耳打ちして
 (さえぎるように)いいから早くやろう
 いや今ねもう一人‥‥
 気になる人がいましたか??
 いやいやもう一人来られた方が‥‥

 まあこれから始めますけども、こういう公演で必ずやりますよね、カメラはダメですよとか、携帯はダメですよとかね。じゃ携帯電話、皆さん持っています? 一回ちょっと出していただいてみんなで確認いたしましょう。公演中に携帯鳴らしてしまった方、マナーモードにするのを忘れてプルルと鳴らしてしまった方、これペナルティーとして、お帰りの際にビール大瓶二本頂くことになっております。これ先に言っておきますよ。今のうちに確認して下さい
 でもオレ最近、大瓶なんか見たこと無いよ
 あっそうですか?
 最近見ないですよね、大瓶
 でも佐渡にあるのは大瓶ですよ T ほんとかな S 佐渡は大瓶しか無いんです
 大瓶しか無いの?
 発泡酒じゃないですよ、大瓶二本いただきますからね
 鳴らした方は大瓶二本!
 今のうちに切っていただきたいと思います
 楽しみですね、終わってからが
 そうですね。そうしましたらもう携帯カメラも使えないはずですからね、電源切っていただいて〜
 カメラ撮っちゃった人はどうなんの?
 カメラの場合何を頂きましょうか?これ決めてなかったですね
 これ決めてなかった
 ビデオとカメラと録音してしまった方は
 どうなるんですか?
 とりあえず腕立て50回くらい、ここで
 公演、途中で止めちゃって? あ〜終わってからね
 帰る前にカウントしていただいてね、50回ね。 まあお気をつけ下さいということで、じゃそろそろ始めますか?
 エッ! もうやるの?
 本当はトイレ行きたいとかじゃないですか?
 ウンって、何で先に言うの?
 それでは!
 あれ?
 まいりましょうかね (気分を変えて元気よく) 「和太鼓 トーク齊富 はじまり はじまり〜」 (言葉きっかけで客電が落ちてゆく‥‥完全暗転)
 ダメダって、これから行くんだからさ、ちょっと灯りも待ってくんなきゃ
 だめですよ、もう始まりました

開演前のフリートークの最後、開演を告げる齊藤栄一 Photo/青柳健二

※こうして、「トーク齊富」公演の幕が開いた。これは初日の幕前フリートーク(ほぼそのままですが、若干の説明を加え、整理をした)。

二日間の本番が終わって、まだ僕の中でも「あれは何だったのか」の整理は出来ていませんが、貴重な経験になったことは確かなことです。それと、齊藤栄一の成長ぶりには本当に驚きました。舞台に二人っきりで登ってみて、本番を終えて初めて分かります。もう僕の知っている14年前の栄一とは、まったくの別人と言ってもよいくらいの(当たり前のことかもしれませんが)成長ぶりでした。それと彼は、本当に元気な人間で、どうしてこんなにタフなの‥‥と太鼓ターミネーターじゃないのか?って思ってしまいました。またいつか会いたいですね。これが幻の舞台にならないように願います  

●『丼うどん』作曲・齊藤栄一 「トーク齊富公演」の他の写真も合わせてぜひご覧下さい

「和太鼓トーク齊富・写真館」は、こちらをクリック

次回打組主催公演 ご案内

2003年を締めくくる 富田和明と熊谷修宏がおおくりする)
唄あり踊りあり芝居あり、お笑い和太鼓演芸場ここにあり
『和太鼓 新紀撃02 約束』新横浜 公演
12月19日(金)夜・7時開演/20日(土)夕・5時開演

あんな言葉やこんな言葉を声に出して叩いてみればアラ不思議
あなたもこれで太鼓の達人!?

富田和明的太鼓合宿『Oh!太鼓』 Vol.9
11月8日(土)13:00 集合〜 9日(日)17:00 解散
内容/続『声に出して叩きたい太鼓』 打!

 

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インターネット版 『月刊・打組』2003年 10月号 No.89

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