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富田和明的個人通信

月刊・打組

2004年 12月号 No.98(12月25日 発行)


新紀撃 三巴誕生的終演

和太鼓★新紀撃03誕生 カメリア公演 12月17〜18日

12月25日

 和太鼓★新紀撃03 誕生公演が終わった(03は年号ではなく、作品番号です)
 終わって一週間になろうとしているのにまだ僕は公演の余韻に浸っている。
 言い換えれば、まだ後かたづけ(経済的なこと、物質的なこと)が終わっていないので頭の中にしょうがなく漂っている。また言い換えれば、富田の今年の仕事はもう終わったので、頭を切り換える必要もなく、そのまま新紀撃モードがゆっくりと消えかかろうとしている年の瀬。

「02約束」公演は二年前の12月に、同じくカメリアホールで幕を明けた。去年は「25周年記念公演」と秋に「和太鼓 トーク齊富(さいと)」があったので、暮れの新作公演は休み。今年は03をやると早くから決めていた。
 しかし‥‥僕にはアイデアが何にも出てこない。
 熊谷とタイトル「誕生」を決めたのは、5月29日、四国海南で新紀撃のイベント出演をした時、海が見える民宿の一室でのことだった。

 その後、その内に何か思いつくかと模索しながら、まず歌(テーマソング)の作詞に取りかかる。紆余曲折があり実は今回は曲が二曲出来た。
 一曲が熊谷修宏作で、もう一曲は富田作。最後、舞台で唄われることになったのは、熊谷作『奇跡』の方。僕作の『誕生』は、御蔵入り。
 太鼓のコンサートでまずテーマソング作りというのもオシャレでしょう?
 今回、熊谷は初めて作詞作曲に挑戦。なかなか素晴らしい曲なんですよ、これが(編曲・成尾梢)
 それで曲作りと平行しながら、舞台の内容ですね大事なのが‥‥これがしかし‥‥まだ何も出てこない。
 僕的には02がベスト作という想いがあったので、ここから離れられないのだろうか。それに熊谷は、「今回は全編芝居でいきましょう!」などととんでもないことを口走る。
 もうそれなら僕たちだけでは絶対にダメ、できない。と早々に白旗を揚げ、旧知の劇作旅人・江尻浩二郎さんに相談をさせていただきました。それが、八月が始まったばかりの五日。

 ここからですね、三人の三巴新紀撃03がスタートしたのは。
 どうしたら「これまでに誰も見たことのない、誰にもマネのできない和太鼓コンサート」が作れるのか?「僕と熊谷の二人にしかできない舞台」になるのか?
 雲を掴むかのように、こんな事をしてみたい、あんな事は無理かな〜、それは絶対にしたくない、など好き勝手に喋り、また江尻さんからの質問表などにも答え、これでナント江尻さんは一本の構成台本を書いてまとめてくれた。これを読んだのが八月下旬。
 元、演劇青年であったもののそれは30年も前の話。今は只のオッサン化している僕に、やはり演じるという芝居は、相当に厄介なことだと心底思い知るのは、まだもっと後になる。
 それに台本が、決まらない。
 阿波踊りコントと広島ヤクザ風コントは完全江尻作でこれは最初から決まりだったが、それ以外の部分が三人で大いにもめた。
 最後にこれでいきましょうと、皆が納得したのは、公演四日前だった。

 それまでは、二人が、或いは三人が稽古場で顔を会わせるたび、台本直し、或いは問題点の話しとなり、一文一字に堂々巡り。稽古どころではなくなった。
 いやいやいや恐ろしい、そして楽しい(と思うようにして過ごした)五ヶ月間。
 一人ならば絶対にこんなことはできなかっただろうし、しなかった。
 あれが出来ていない、これが覚えられない、それはどうする?そう言えばあれはいつ捜すのか、練習時間は‥‥待て待て一つずつ一つずつ‥‥焦る気持ちを抑え、自分の限界がどこにあるのか、なんて考える間もなく毎日が訪れ、そして一日一日が過ぎていった最後の数週間。
 江尻さんと、熊谷の二人に引っ張られて何とか幕が開き、そして降りた。
 よくもこんな舞台が出来上がったものだと、我ながら感心して、これも一重に二人の力が大きいと頭を下げる。

 僕は、これまでの太鼓コンサートの常識を覆すものはなんだ?とそればかり考えてきましたが、もうこれが誕生して、今はなにも考えつきません。こんなに必死になったのも久しぶりでした。
 今回の舞台に参加してもらえた照明・音響・舞台はじめ、すべてのスタッフの皆さまに感謝いたします。
 そしてホール客席に一杯とは言えない数のお客さまでしたが、温かい声援とたくさんの拍手、それに沸き上がった力強い笑い声は、会場と僕たちの心満杯に響き渡りました。
 お近くから、またこの日の為に遠路はるばるお越し頂きました皆さま方に、心から感謝いたします。
 皆さまと一緒に、最後の最後まで夢を見させていただき、ほんとうに本当にありがとうございました。
 僕はまだ夢を見ているようです。

和太鼓★新紀撃03誕生 初演

カメリアホール(東京・亀戸) 撮影/青柳健二

阿波踊りコントの一シーン 四役早替わりをなんとか踊る富田。高円寺・江戸っ子連の練習に一度だけお邪魔して踊りを教わる

神楽シーンでフラメンコを踊る熊谷 振付は、Gロケッツ・山中陽子

初の殺陣に挑戦。振付指導は、島口哲朗(剱伎衆かむゐ)

株式会社 浅野太鼓楽器店からは、この日の為の特製伏せ台を作って頂き、太鼓もお借りした

二人太鼓「踊る大平胴」を叩く。衣裳デザイン作製はすべて、鴇田章+伊藤晴美。衣裳提供は、ブロンドール株式会社

ラスト「奇跡」を唄い踊る(編曲・成尾梢 振付・山中陽子)

『奇跡』         作詞・作曲/熊谷修宏

 

こうして 目を閉じて 思い出しているよ 君と出会ったことを

あの日 空に浮かぶ 星達のように 輝き続けようと

決して 晴ればかりじゃ ないけれど 迷うことなんかないさ

いつも 空の上の星のように 君を 照らしているから

 

こんな広い宇宙で 君と出会えた奇跡が 時を越えて行く

幾千の星に 願い掛けて この思いよ君に届け

 

こうして 思い乗せて 空に解き放つよ 君との奇跡を

遠く 離れてても 思いは一つさ あの星を見付けよう

例え いくつ星が うまれても 戸惑うことなんかないさ

どんな 時も同じ輝きで 君を 照らしているよ

 

君がくれた笑顔と 優しさの輝きが 僕を包み込む

両手広げ 空に叫ぶよ この奇跡に ありがとうと

 

君がくれた笑顔と 優しさの輝きが 僕を包み込む

両手広げ 空に叫ぶよ この奇跡に ありがとうと

こんな広い宇宙で 君と出会えた奇跡が 時を越えて行く

幾千の星に 願い掛けて この思いよ君に届け

 

君への思いは永久に…

ありがとうございました!

和太鼓★新紀撃 03誕生

出演/富田 和明 熊谷 修宏  構成・演出/江尻浩二郎

照明/村上 智子 関 好江 岡本 真貴  音響/斉藤 美佐男(T・E・O) 酒見 篤志

舞台監督/山本 一朗太  舞台協力/窪田 美香 柿崎 勝行

ダンス振付/山中 陽子(Gロケッツ) 殺陣振付/島口 哲朗(剱伎衆かむゐ)

衣裳/鴇田 章 伊藤 晴美  編曲『奇跡』/成尾 梢  宣伝写真/福田 武

 

企画・主催/打組  共催/(財)江東区地域振興会 カメリアホール

協賛/浅野太鼓楽器店 ブロンドール株式会社

協力/黒崎 八重子 山本 雅彦+PROX DESIGN 江戸っ子連 太鼓アイランド

中村 光子 矢崎 一美 小田嶋 直子 宇田川 泰子 与那嶺 幸代

会場/カメリアプラザ3F・カメリアホール 東京都江東区亀戸 2-19-1 JR総武線亀戸駅・東武亀戸駅下車、北口から徒歩2分

 

※ 今回は、月刊・打組 の発行が大変遅くなりました

中越大震災、台風の被害に遭われた皆さまへ 一日も早い復興を祈ります
 
寒い冬をこれから迎えますが、お体を大切に、また元気でお会いしたいと思います

これまでの富田+熊谷 公演記録はこちら
和太鼓体感音頭☆新横浜
和太鼓 新紀撃 01
 
和太鼓★新紀撃 新横浜
新紀撃01写 真館
和太鼓★新紀撃02 約束
エッセイ「約束のあとで」
和太鼓★新紀撃02 約束 写真館


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